心を満たすワンプレートランチ


街をうろつきながら、

私はかなり凹んで元気を失くしていた。

誰かに相談に行こうか、

そのまま家に帰ろうか迷っていた。


午後1時過ぎだったからか、

食欲は感じないのにお腹が鳴った。  


私は甘い物は好きだったが、

あまり食べることにこだわりがなかった。

いつも自分で用意した簡単な料理を食べ、

たまに近所のうどん屋さんで、

サービスランチを食べるのを

楽しみにしているくらいだ。


でもこんなに凹んでいる日は、

いつも混んでいてあわただしい

うどん屋さんに行く気にはなれなかった。

かといって家に帰って

自分で作る気にもなれなかった。


 通りを歩いていると、

少し奥まった場所に洒落た看板が見えた。

ちょっと気を惹かれて、

近くに行ってみると、

黒板にランチタイムが2時まで

と書かれていて、

何より「ワンプレートランチ」

と言う表示が気になった。


木造りの店はまだ新しい様子で、

清潔感にあふれていて、

家庭的な雰囲気だった。


 格子戸をあけると、

「いらっしゃいませ~」

と明るい声で迎えられた。

店の中も外観と同じで、

温かく清潔な感じだった。


カウンターと

掘りごたつ風の座席があったので、

靴を脱いで掘りごたつ風の座席に座った。

お茶をいただくととてもほっとした。

気になっていた

ワンプレートランチを注文した。


 料理を待っていると、

カウンター越しにワンプレートランチの

天ぷらを揚げる音がする。

料理が運ばれてくると、

その彩の良さに驚いた。

とても綺麗で美味しそうだった。


まずは、サーモン、タコ、キュウリ、

アボガド、玉子が、

とろろ昆布のシートで巻かれた

彩のいい巻きずしを食べた。 


 「美味しい!!」


 マグロ、玉子、キュウリの海苔巻きも

美味しい。

天ぷらは、揚げたてのアツアツで

サクサクしている。

大好きなエビの天ぷらもある。

ボリュームたっぷり水菜のサラダも

野菜がとれてありがたい。

南瓜の煮つけはホッとする味だった。


どの料理も丁寧に作られていて美味しい。

 がつがつ食べながら、

私は自分がさっきまで

あんなに凹んでいたことを忘れているのに

気が付いて、可笑しくなった。


「『腹が減っては、戦はできぬ』って、

本当やな」と思った。  


ワンプレートランチには、

食後のコーヒーがついていて、

食事が済むとコーヒーが運ばれてきた。

お店の奥さんと少しおしゃべりをした。

気さくで、優しい印象の奥さんだ。

 落ち着ける場所で、

ゆっくり美味しい食事をすると、

少し心に余裕が出た。


家に帰ったら少しお昼寝しようと思った。

悩み事は、

それから考えても遅くないだろう。

心と身体は深く結びついていると思う。

すきっ腹で頭ばかり緊張させて、

考えてもいい考えなんて浮かばない。

「ワンプレートランチ」は、

お腹も心も満たしてくれたようだ。


鬱・夫の死を克服した作家:村川久夢の部屋

こんにちは、村川久夢です。 鬱や夫の死のために人生を投げていた私が、やっと取り戻した夢は、自分の思いを書くことでした。自分の思いを書くことで長年苦しんできた「生きづらさ」の正体も見えてきました。生きづらさ、鬱、大切な人の死に苦しむ人と私の経験をシェアしたいと思っています。ここにはそんな私の作品を投稿しています。 <著作> 『大丈夫、きっと乗り越えられる~鬱・夫の死を克服した私からのエール~』

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